>

乗馬講座

 

 

 よう、 じゃねぇか!元気でやってるか?

 ここはだなぁ、当時の生活にも戦にも欠かせなかった馬…っていうか乗馬について俺が語る部屋だ。まぁ語るって言ってもさわりだけだけどな。

 ここに来てくれたってことは…ひょっとして も乗馬に興味あるかぁ?

 えっと、時間は大丈夫か。よかったら座れよ。歓迎するぜ、俺。

 

 さて、始めるか。

 まぁ一般に馬に乗るって言ったら、とりあえず馬の背中に人が乗っていて、それで馬がパカパカ進んでるのが想像できると思うんだな。そういう馬の進み方は大きく分けて三種類ある。常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)だ。

 常歩は馬が歩いている状態だ。揺れは大したことねぇけど馬の背中に乗ることで視線が九尺(約二メートル強)を越える。初心者はまずはそれに慣れることから始まるぞ。

 それから駈歩。これは馬がマジで走ってる状態。速いけど馬も疲れるんだな。

 んでその中間にあたるのが速歩だ。速さと疲労の具合から一番経済的なのがこれ。この中で重要なのが軽速歩って乗り方だ。

 速歩の際、馬が一歩進むごとに反動がくる。この反動は常歩よりずっと大きくなるぞ。んでそれに合わせて乗り手が上体をポンポンと上げて反動を抜いてやるのが軽速歩。こうすると馬が走りやすくなるんだ。

 乗り手の動きとしては…そうだな、西の馬騰の息子に馬超っているだろ。あいつの凶悪な馬上溜め攻撃(チャージ)を見たことあるか。槍を振り回しながら膝で立ち上がってるだろ。あんな感じだ。軽速歩の場合それでも馬は動いてるわけだから馬に揺らされるのに合わせて立つ座るを拍子よく繰り返す。立っている瞬間は膝と鐙(あぶみ)で上手く自分の体を支えるんだぜ。

 そういえば親父や権の見せ場で壊れた橋を飛び越えるって場面があったっけ。あの瞬間実は乗り手の体は鞍から離れて宙に浮いてるんだ。要は馬に呼吸を合わせてなるべく体重をかけんなってことだな。

 

 じゃ、次は実際に馬の進退に関する合図についてだ。

 馬に乗ったらまず乗り手が姿勢を正して馬に準備をさせる。それから両足で馬の腹をぐっと押す、これで進むぞ。

 止めるときは乗り手がそれまで馬に合わせていた動きを止めることで馬に停止を伝える。体を少し後ろに引くようにして腰を使って止める感じかな。俺みたいに両手で棍を持ってなくてもなるべく手綱を引いて止めるんじゃねぇぞ。手綱を使うのはむしろ曲がるときだな。

 こんな感じで、馬に乗るときはとにかく膝や腰を使って体の均衡を取ることが重要だ。じゃあ馬が驚くか何かして後ろ足で立ち上がるようなときはどうするかっていうとだな。そのときも膝を締めて自分の体を支えるんだ。あとは体を前に持っていって場合によっちゃ馬の頸(くび)の下に手を入れて落馬を防ぐ。間違ってもこのとき手綱を引いちゃだめだぜ。馬もろとも後ろに転げちまうからな。

 ちなみにだ。体を馬に固定するには今言ったように膝で鞍を締めるのとあと鐙を使うわけなんだが、この鐙が歴史に登場するのは今のところ西晋以降からしか記録がない。つまり俺たちは足をぶらぶらさせたまま武器を取ってたって考えられる。自分で言うのもなんだけど、それって結構すげぇよな。

 

 あと乗るときの注意点として…重量の限界について触れとくか。乗馬用の馬だと背中に乗せるのは三石くらい(約八十キログラム)までと考えてくれ。それ以上だと馬が腰を痛めちまうんだ。相当重いモノが乗るときは乗馬用じゃなくて農耕用の馬じゃないと厳しいと思うぜ。それでなくても中国の馬は小さめだ。それを考えると曹操の部下のでかい鉄球持ったヤツ…許チョだっけ、あいつの乗る馬ってすげぇ頑張らねぇといけねぇ。馬も大変だよな。 

 それから馬を進めるときは道が一番乗りやすいと思うけど、砂浜、草原の順に難度が高くなる。草原の難しさってのは地面のでこぼこだ。砂浜だと一応見えるからな。

 おっと最後に馬から降りるとき。降りる前に馬の頸を軽く叩いてやってくれ。「ありがとう」の意味になるからな。

 

 ま、ざっと流したけど、こんなもんかな。ここまで付き合ってくれてありがとな。

 この部屋じゃなくていいから、また来てくれよ。

 じゃな、

 

 


 

管理人が乗馬スクールへ行ったのは三日間だけですので専門的なことは求めないでください(笑)。

ちなみに管理人の技術は軽速歩を数秒間だけ続けることが可能といったレベルです。この軽速歩では初めて自転車に乗るようなバランス感覚をつかむ練習が必要です。馬上で二拍子の馬のテンポに合わせて立つ座るを繰り返すのは難しいです…。

参考 『LET'S ENJOY RIDING』 社団法人全国乗馬倶楽部振興協会

    『歴史群像グラフィック戦史シリーズ 戦略戦術兵器事典1 中国古代編』 学研

    「歴史群像」 1996年10号 学研

 

DREAM  HOME