ゼネテスの贈り物


 

 ゼネテスとノーブル伯は冒険者同士。その武器でモンスターを相手にすることも多いことから、お互いに日々鍛錬のため、手合わせをすることもしばしばです。弓をつがえたノーブル伯の姿を思い浮かべながら、ある日、ゼネテスは思いました。

「なんだかんだ言って俺のほうも世話になってるからなぁ。たまには、いっちょプレゼントでもしてみるか」

 ゼネテスは早速、道具屋へ行き、あれこれ悩んだ末に、矢をプレゼントすることにしました。自分との手合わせのときに、必ず彼女は何本か駄目にしてしまうからです。ゼネテスはその道具屋で、尾羽も立派な上等の矢の束と、あと個人的に、控えめな表現をすれば滋養強壮剤であるものを幾つか購入しました。

 ゼネテスはノーブル伯宛てに簡単なメッセージを書き付けると、二つの包みを持ったまま、リューガ邸に向かいました。あいにくノーブル伯は不在だったので、執事のセバスチャンに預けようかとしていたところ、向こうからレムオンが歩いてくるではありませんか。

「やべぇ。俺からのプレゼントだってわかったら、間違いなく握り潰されちまうぜ」

 ゼネテスは、とにかくノーブル伯に渡してくれと、包みとメッセージをセバスチャンに押し付け、レムオンが気付く前に立ち去りました。ですがゼネテスはこのとき、慌てていたため、渡すべき包みを間違えてしまいました。主人の性分をよく心得ているセバスチャンは、まずレムオンに報告し、その包みとメッセージを渡しました。

「ファーロスのどら息子から、我が妹へ、だと?」

 レムオンが包みを開けると、滋養強壮剤が何本か入っていました。そしてメッセージには、次のように書かれていました。

 

よっ、元気か。突然だが、こいつは、いつものお礼だよ。お前さん、よく使うだろ。他にも色々考えたんだけど、やっぱ普段から使うものが一番いいと思ってな。俺の相手するためにもある程度はどうしても必要になるし。なんせここんところ毎日だからな。最近お互いノッてるよな。今のペースじゃ何本あっても足りねぇくらいだと思うが、とりあえず今回はこのくらいで我慢してくれ。

まぁいつも何時間も付き合わせて悪いな。それでもお前さんほどいい相手はいないから、くたくたになってもやめられねぇんだよ。お前さんが真剣だから、俺もつい本気になっちまうんだ。

それにしても、お前さんも成長したよな。今じゃ俺が教えることもないくらいだ。力の入れ具合とか完璧だぜ。すっかり慣れたって感じだな。今なら前からでも後ろからでもすぐに対応できるよな。たいしたもんだ。

大体いつも俺から声掛けるけど、この前はお前さんから誘ってくれたっけな。実はすげぇ嬉しかったんだ。だからつい調子に乗って、お前さんのペースに合わせられなかった。それでもお前さん、もう体力もねぇはずなのに言ったよな、「もう一回!」って。なんてガッツのあるヤツだって思ったぜ。

あ、礼なんかいらねえから。そうだな、このプレゼントを俺のために使ってくれればそれでいい、なんてな。じゃ、また相手してくれよ。

追伸:最近お前さんのお気に入りのあれ、3回チャージして7連発ってヤツ、俺に遠慮すんのは失礼な話だぜ。そんなヤワじゃねぇから。

 

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